クロムクロ/P.A.WORKSが描く富山県。その地元愛
鬼の正体が判明しいよいよ物語が加速し始めた感のあるクロムクロ。
前回のコラムでは監督の岡村天斎が描くスタイリッシュなアクションやストーリーにスポットを当てて考察しましたが、今回は制作スタジオサイドである『P.A.WORKS』の方向性や舞台となる『富山』をフィーチャーしてみました。
P.A.WORKSがこだわる美術。最大の武器は綿密で緻密な背景描写
P.A.WORKSは堀川社長が1990年代、当時のアニメ制作の現場体制では良い物がなかなか生み出せない、このままではアニメ界の未来は無いという思い、そして昔結婚した時に「子供が成長する頃には富山に戻る」と約束していたことが切っ掛けとなり、2000年富山に会社を設立したことから始まります。
最初は社員2人、下請けやグロス請けから始まったこの会社も2008年には初の元請け作品となる『true tears』を制作。
丁度時期的にも新海誠作品や京都アニメーション作品など、
① 特定の地元に密着した、
② かつ背景美術に注力した、
高品質な作品にファンの注目が集まる時流に乗って一躍ブレイク。その後の作品でも、
『花咲くいろは』では石川県湯涌温泉郷を舞台に伝統と格式を重んじる旅館と豊かな自然の風情を。
『TARI TARI』では神奈川江ノ島の明るい爽やかで瑞々しい風景を舞台にした青春物語を。
逆に『SHIROBAKO』では大都会である東京武蔵野を舞台に、都心の喧騒と多種多様な人材が混然雑多に入り混じり合うアニメ業界とをオーバーラップさせた群像劇を描いています。
このように舞台となった地元を綿密にロケハンし、緻密に作画するスタイルは今でも健在。日本各地からだけでなく世界中からもいわゆる「聖地巡礼」を行うファンが続出するなどP.A.WORKSのアニメは地元にも貢献、さらにその知名度を上げる様になっています。
堀川社長はTVインタビューで「P.A.WORKSが作った物が東京を刺激する事が自身の夢。そしてそれはそんなに遠くはない」と語っており、その願いは現実の物となっています。
そして2016年、設立15周年記念作品であるクロムクロにてP.A.WORKSは富山に帰ってきました。tt放送以来、実に8年ぶりのことです。
北陸の山々と海、豊かな自然と現代劇らしい近代的かつ現実に存在する町並み。リアルなビジュアルと空想科学SFが同居し、剣豪巨大ロボットというこれまたこれまでにない新しいジャンルを切り開く。
古く、そして新しい――そこには並々ならぬ富山愛が込められています。
タイトルロゴに秘められし富山愛
タイトルらして既に富山県満載です。クロムク『ロ』の字のデザイン、これ実は富山県の形です(笑)
ちなみにリアル地図の富山県の形はこちら。
クロムクロが描く美しい風景ビジュアル
さてここからはクロムクロの各話の軌跡を追って舞台背景を紹介して行きましょう。(聖地探訪ではないので説明は軽めです)
まずはメインの舞台である黒部ダム。日本最大級の水力発電所でもあり、堤高186mのダム本体は人工建築物としては県内最高峰。ダムとしては今も日本一の大きさだそうです。
黒部ダムの下流。3話でカクタスと剣之介が激しい戦いを繰り広げた河原です。
その後の描写(両断された大岩の存在)から見るに、1話アバンにおける鬼ムクロとの戦い(?)もこの辺りで行われたのでは無いかと推察されます。
立山の峰。背景描写に定評のあるPAワークスの背景スタッフのこだわりが感じられます。
2話では長き眠りより復活したクロムクロが黒部から富山市内まで、文字通り一直線に駆け抜けています。地図にするとこんな感じです。
▲ 立山を登って山頂から飛び降りる
▲ 小春を飛び越え立山町を流れる常願寺川沿いに突っ走る
▲ 田圃を突っ切って富山市を目指す
地図で見ると直線距離で約43Km。仮に15分で到着したと仮定しても、時速約180km/hで(立山連峰を登り降りして)走破した計算になりますね。
壊しまくりの富山市街戦!
さてお次は鬼の怪ロボットが攻めてきた富山市(とその周辺)から。上の画像は神通大橋。6話では空港周辺を舞台に鬼ロボとクロムクロ、そしてガウスが激しい攻防を繰り広げます。
新湊大橋。富山県射水市の富山新港に架かる日本海側最大の2層構造の斜張橋です。イエロークラブの最初の上陸地点となりました。ここから富山市街までイエロークラブは徒歩で侵攻。
2015年長野~金沢間が開通したばかりの北陸新幹線。射水市から富山市に向かう途中、イエロークラブが通過に邪魔なので叩き斬りました。自衛隊&UN軍の砲撃のせいでは無いと…思います。多分。
第一次富山防衛戦の戦いの主な戦場となった噴水のある富山県庁前公園。奥に見える建物は北日本新聞社。
NHK富山支局より県庁前公園の俯瞰。
県庁前公園周辺が一望出来るカット。NHK電波塔の奥に見えるタワーは富山市役所展望塔。
戦い終わった剣之介が向かった富山城。昭和5年に焼失したため天守閣自体は鉄筋コンクリート製の模造建築物。戦国時代には無かった建築様式だと思うのですが。それでもビル街に比べて剣之介には見慣れた感があったのでしょうね。
6話から。鬼ロボ退治に向かうクロムクロが走った北陸道。300tの巨体にも関わらず道路に傷一つ付かないのは重力制御で地面にかかる負荷を抑えているのでしょう。
クロムクロやイエロークラブが水面を歩く(走る)描写もありますのでドラえもんみたいに実は数ミリ浮遊している可能性もあります。
6話のメイン舞台となった富山きときと空港。あくまでもこれは愛称で公式には『富山空港(Toyama Airport)』が正式名称です。6話で派手にブッ壊されました。壊したのは主にガウス隊のせいですが、止めを刺したのはイエロークラブの自爆です。
富山空港の周辺を流れる神通川の河原。クロムクロとイエロークラブの決着の場となりました。
今後もクロムクロでP.A.WPRKSは富山の各所を綿密にロケハンし、派手に大暴れするのでは?と思われます。どのような場所が戦いの舞台となるのか――その点を注目しつつ見るのも楽しみ方の一つなのではないでしょうか。
(ごとうあさゆき)
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