天鏡のアルデラミン/4話感想 常に相手の思考の先を読む!演習の先にイクタが見据えるものは?
2016/08/09
いよいよ始まる模擬戦。果たしてイクタの智略は戦場をどうデザインするのか?
全力で日常を怠けるべく、楽して勝とうとするイクタの采配が光るねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン第四話『永霊樹の番犬たち』のレビューです。
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2016/08/09
いよいよ始まる模擬戦。果たしてイクタの智略は戦場をどうデザインするのか?
全力で日常を怠けるべく、楽して勝とうとするイクタの采配が光るねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン第四話『永霊樹の番犬たち』のレビューです。
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いよいよ演習のクライマックス、模擬戦の開幕です。前日に現地入りし入念に周辺の状況を下調べしたイクタは当日昼の配陣前には既に幾つもの罠の種を仕込んでいました。
互いに河川防御陣を風銃の射程ギリギリの位置で敷くイクタとサリハ。サリハはこの配陣をさせられた時点で既にイクタの知略の網の中。掌の上で踊らされています。
サリハは自ら「暫くは睨み合いだな」と言っていたにも関わらず、動きを見せたイクタ小隊に釣られてヤトリ小隊を動かしてしまいます。
ヤトリ「(あんたにとってはさぞかし転がしやすい相手でしょうね、イクタ…)」
命令に従いヤトリは本隊を離れます。しかし命令には完全に従わずほぼ下流浅瀬までの中間地点で部隊を待機。状況を知るため斥候を放ちます。
しかしそれも折り込み済み。ヤトリの放った偵察斥候を狙撃するトルウェイ。彼我の現況が分からなければさすがのヤトリでも受け身を取らざるを得ず、即応能力が鈍ります。
トルウェイの合図で戦端を開くイクタ隊。接近戦に強いヤトリ隊を引き剥がし、戦力比を3:2にした状況で一気に渡河、敵主力に電撃戦で迫ります。
昨日までの雨で増水、川は胸までの深さがある――そんな思い込みも罠として利用。前日から準備した渡河計画、その正体は予め周辺に生えている硬くて重く水に沈む樹木を伐採して水中橋を作るというもの。
相手が事前に水深を測ろうとすれば狙撃して川に近づけさせなければ済む話。増水で水が濁っているため橋がバレる心配も低いです。それら全てを踏まえての前日設営でもあったのでしょう。
最短距離を一気に接敵、サリハを仕留めにかかるイクタ隊。しかしあと一歩のところまで追い詰めるも寸前でヤトリ隊の救援が駆け付けます。
途中で待機していた分、イクタの予想より速く帰参することが出来たのでしょう。ヤトリの実力を知るイクタはさっさと撤退を指示します。
互いに退却して陣を引き直すイクタとサリハ。模擬戦のため風銃はペイント弾とはいえ、近接戦闘では殴り合いですから怪我人も多数出ています。後方待機中はハロ率いる衛生部隊の出番。それらも演習項目の一つなんでしょう。
その頃サリハの八つ当たり叱責を受けるヤトリ。怒りに燃えるサリハは追撃して来るであろうイクタ隊を罠に嵌めようと待ち受けるべく再陣形を整えます。逆襲に燃えるサリハ。
イクタ「……てな具合に、サドイケメンは復讐に燃えてるところだろうね」
しかしイクタはそれすら読んで、さらにもっと楽に勝てる作戦を考えていました。勝利条件が殲滅戦で無い以上、わざわざ敵を追う必要などありません。
どれだけ待てども一向に追って来る様子の無いイクタ隊。不審に思い始めたサリハの前に偵察に出した斥候が慌てて戻ってきます。
斥候兵「報告します!敵3個小隊は森林地帯の北口を塞ぐ形で兵力を展開しています!」
イクタの計略にまんまと嵌ってしまったことに気付くヤトリ。模擬戦では時間の制約があり、そもそも殲滅させて勝敗の決着を白黒付ける必要もハナから無いのです。こだわりを捨てさえすれば優勢勝ちでも十分。基地へ帰るために必ず通らねばならないルートを抑えさえすれば、最低限度の勝利条件を満たすことが出来ます。
悠々と待ち受けるイクタ隊。中央を薄い凹形の防御陣形でいるのも相手の突撃を誘ってのものでしょう。もしかすると戦闘地域の境界線に押し込もうとするサリハの策略すら読んでいたのかもしれません。
サリハ「よしッ!全隊突撃――」
《パン!》
サリハ「…えっ!?」
突撃をかまそうとしたサリハの後頭部を超遠距離狙撃で仕留めるトルウェイ。つまり最初からこの位置にサリハが陣を配することすら、全てイクタの掌の上で転がされていたということです。
隊長の戦死により指揮を引き継いだ弟スシュラは敗戦を認識、ヤトリに命じイクタ隊の包囲を一点突破、残存部隊の撤退を命令します。
格上の相手にまさかの勝利。喜びに沸き立つイクタ隊ですがイクタはそれを窘める様に突出して無謀な戦いをした部下を叱責します。それは次なる一手の仕込みでしょう。
イクタ「イクタ・ソロークの部隊は、楽に戦って楽に勝つ。常怠上々怠惰上等。僕に追いてきた奴には一人残らず楽をさせてやる」
今回の指揮権はあくまでもスーヤとの取引で獲得したもの。イクタは自身の力と信頼で兵達の支持を得なければなりません。なにしろスーヤ母の件で評判は最低ですし(笑)
兵から大きな歓声を浴びるイクタ。そのためのアジテーションだったのですが、どうやら本人の意図したよりもずっと薬が効いてしまった様子。トルウェイやマシューも謎の感動をしてしまいます。
そしてトルウェイは長く続けてきた持久戦――それこそ自分が生を受けてからずっと続けてきた長い戦いについに効果的な一撃を入れることが出来ました。
その頃戦場とはまるで違う方向、森を西に向かって走るファミーユ姫の姿がありました。それは警護の騎士に「イクタが模擬戦中に倒れた」というデマによって誘き出された結果でした。
近衛兵の一部が帝国に反旗を翻し、姫を誘拐したのです!
残存兵をまとめるスシュラとヤトリ。降参を進言するヤトリの耳にイクタからの合図――光信号を音に置き換えた銅鑼の音が届きます。
これでファミーユ姫の身に異変が起きたことを知ったヤトリは残存兵力をかき集め、森の西へと向かいます。
逃走する誘拐団を強襲するヤトリ隊。しかし近衛騎士は意識を取り戻したファミーユ姫に凶行の理由を語り、ヤトリに生まれた僅かな隙を突いて取り押さえます。大ピンチに陥るヤトリ!
しかし本日3度目、トルウェイの神憑りの狙撃によって窮地を脱出したヤトリはまさに炎の修羅となって剣を振るいます。
近衛の正騎士相手に奮戦無双するヤトリ。全身を赤く染め、誘拐団の全員を皆殺し――文字通り嵐のような剣風を巻き起こします。
戦いが終わり興奮した精神がイクタによって収まるヤトリ。その視界や声にもフィルターがかかっており、まるで夢の中のような描写にしているのが上手い演出ですね。
まさにギリギリ間一髪のところを救われたファミーユ姫。軽い憎まれ口を叩くイクタに大泣きして〆。
長いようで短かった演習も終わり、次回は事件の後始末でしょうか。模擬戦だけでなく怒濤の誘拐イベントと実に中身の濃いお話でした。終始イクタの智略に劣勢だったヤトリにも最後汚名返上の機会が用意されていたのが上手い展開ですね。
近接のヤトリ、遠距離のトルウェイと智将イクタの指揮能力を支える2枚看板というところでしょうか。思っていたより戦闘が堅実というか、殴り合い中心だったのがちょっぴり意外でした。
次の展開が気になるところですが、テンポが予想以上に早いので、見ていて気持ちは良いのですが原作ファンは消化が速過ぎてもう少しゆっくりやって欲しい~とか思っているかもしれませんね(笑)
(ごとうあさゆき)
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