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クロムクロ/なぜソフィーはヒロインになれなかったのか? お嬢様が憧れるサムライ――剣之介とゼル、二人の侍の秘密と謎!?

   

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今回はメインキャラの一人にして最終決戦の立役者の一人であるソフィー・ノエルにフォーカスを当ててみました。

美少女で可愛くて、頭脳明晰・運動神経は抜群、少々頭は固いものの、ジョークを理解するくらいの適切な距離感を保っています。そんな魅力たっぷりの彼女が、なぜメインヒロインになれなかったのか? その疑問と同時に、彼女が憧れるサムライ――現代に甦った二人の侍、剣之助とゼルの謎と秘密についても考察していきます。

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ちょっと生意気な妹的存在

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ソフィ・ノエル。立山国際高校に通うフランス生まれの留学生。サムライを信奉し、小さな体に似合わず柔道の猛者。ロボット操縦にかけては天才的で、黒部研究所ではテストパイロットを任されています。

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主な乗機はガウス2(複座仕様・メインパイロット)、最終決戦では単座仕様のガウス1に搭乗。初実戦にも関わらず見事な戦果を上げています。

お嬢様は日本びいき

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高校では由希奈のクラスメイトですが飛び級のため実年齢は年下です。しかしフランス国家憲兵隊治安介入部隊(GIGN)での研修経験を持っており、また日本刀や銃器の扱いの心得もあります。

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まさに文武両道を地で行く秀才。和の文化に精通し、『葉隠』を諳んじるほど『侍』に関しては強い拘りを持っています。

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剣之介と一番最初に出会った際、胸を触れられてしまったこと(事故)から、最初は彼にあまり良い感情を持っていませんでした。しかしエフィドルグとの戦いを通して、現代に生きる本物の侍の生き様を見て、徐々に態度を軟化させていきます。

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また由希奈に対しても、クロムクロ搭乗以前はただの同級生として(基本的には視界に入っていない?)、クロムクロ搭乗後も当初はパイロットとしての責務を果たさない由希奈に対して、非常に辛辣な態度を取っていました。

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しかし剣之介と同じく長く厳しいエフィドルグとの戦いや訓練を通して、由希奈の努力や成長、また意外な才能を目の当たりにすることで彼女を認めていきます。

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そんなソフィーですが、当初はメインヒロインの一人として用意されていたフシが多々見受けられます。

キービジュアル等でも剣之介の近くに立ち位置することが多く、本来は侍好きから剣之介への個人的な思慕感情、あるいは由希奈とのライバル感情に発展していき、剣之介由希奈とトライアングルな関係になる…みたいな構想も(可能性の一つとして)あったのでは?と思われます。

なぜソフィーはヒロインでなくなったのか

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ハッキリ言ってしまえば、岡村天斎監督の作風が色恋沙汰に向いてない――というか、あまりドロドロとした人間関係をメインとしていない、という部分が大きいでしょう。

あと由希奈の成長をじっくり描き過ぎたあまり、ソフィーの意識の変化が遅くなり(実際剣之介に対する感情の変化が見られるのは16話から)、ほぼ終盤の怒涛の展開に巻き込まれ、かき消された感があります。

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また剣之介にとって『日常要素としての小春の存在』が番組開始前の想定より大きくなり過ぎてしまったのでしょう。『出来る妹』なポジションを小春に奪われてしまった形です。

結局ソフィーに残った要素は『頼りになる戦友』としての立ち位置だけ。むしろ剣之介より由希奈との絡みで『クラスメイト』『頼りたい友達』のウェイトが重くなってしまいました。その点は少々残念ですね。もちろん小春は小春でとても魅力的なキャラなんですけどね(笑)

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オーガとの最終決戦では他の機体より1ランク以上落ちるガウス1に搭乗、フレキシブルブレードの1本を根本から断ち切る大戦果を上げています。

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ただしガウス1は戦果と引き換えに腰部を真っ二つに寸断される大ダメージ。まさに肉を斬らせて骨を断つ、武士道とは死ぬことと見つけたりを体現したシーンです。

もちろんソフィー自身が言っていたようにこの言葉は死に急ぐことではなく、死ぬ気になればなんでも出来る、また武士はけして犬死をしてはならない――『己の命の使い所をきちんとわきまえよ』という意味です。この場面はソフィーの武士道に対する拘りを具現化した見事なシーンではあるのですが、やはりヒロインではなく『3人目のサムライ』を象徴するシーンなんですよね。

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そしてヒロインとしての株を上げたのが由希奈。ソフィーが文字通り血路を開き、残りのブレードをトム・ムエッタ・剣之介が取り抑えたことでオーガの守りに隙が生じます。そこに侍でも無ければ戦士でも兵士でもない――普通の少女由希奈がトドメの一撃を刺す、という展開が生きてきます。

このクライマックスが象徴する様に、ソフィーは由希奈のためにヒロインの座を甘んじて譲った感があります。終盤では本人自ら身を引き、縁の下で由希奈を支えることに徹していたのかもしれません。

二人のサムライの生き様

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そんなソフィーの憧れるサムライですが、クロムクロの劇中には2人の武辺者が登場しました。一人は青馬剣之介時貞。450年の時を超え現代に甦った戦国の侍です。

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もう一人はゼルことゼルイーガー・ミュンデフ・ヴィシュライ。長命種の異星人で約450年前に仲間と共に地球に来訪、鷲羽の雪姫と共に当時のエフィドルグ先遣隊残党に立ち向かい、剣之介と雪姫にクロムクロを授けました。

前大戦が終結後はたった一人生き残り、隠遁生活をしながら人類の発展を見守って来ました。あるいは221光年先の母星に先遣隊が救難信号を送っていることを知っていて、往復442年以後に新たなエフィドルグが地球に再襲来することに備えていたのでしょう。

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エフィドルグに洗脳技術や記憶改竄技術があることから剣之介の正体や記憶も疑われましたが、実際は『エフィドルグの技術によって不老不死化』『450年前に大怪我を負ったがゼルに治療して貰った』『雪姫もエフィドルグに攫われたがゼルに救って貰った』ことが判明。

前大戦末期の敵グロングル自爆から、たまたま運良く生き残り、クロムクロが自己修復モードに入る中、脳が無事だった剣之介は冷凍睡眠状態の中でクロムクロ同様、ナノマシンで自己修復と蘇生を行っていたのでしょう。

また25話の剣之介本人の言から、剣之助がまだエフィドルグと戦い初めて1年も経っていないことが判明しました。剣之介が現代に蘇り、オーガとの決戦まで劇中では約半年ですから、城を出た=雪姫捜索から最後の爆発に巻き込まれるまで(剣之介の体感時間で)約半年ということになります。この辺りはいずれ時系列を特集したいと考えています。

ソフィーの思慕の感情は剣之介からゼルへ?

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序盤は謎の怪人物『鬼』、そして終盤にはついにその正体を現した全ての真実を知る異星人、クロムクロの物語の根幹を構成する重要人物こそゼルです。彼の存在はソフィーが信奉するサムライとしても非常に重要なものでした。

剣之介が戦国時代の『いくさ場に立つ武辺者』、もののふとしての侍だとすれば、ゼルの佇まいは江戸時代以降のサムライ――文武に秀で、叡智と礼儀を善く学び善く知る、まさにソフィーにとって理想のサムライ像と言っても過言ではありません。

恐らくイメージ的なモチーフは『スターウォーズ・エピソードⅣ』に登場するベンことオビ=ワン・ケノービではないでしょうか。

ジョージ・ルーカス監督がスターウォーズを製作するに当たってオビ=ワン役に三船敏郎にオファーを出していたことは有名ですし、サムライ精神を持った隠者キャラ、世捨て人の様でありつつも広く地球や銀河の未来のことを考える叡智を持ち、孤独でありつつもけして信念に揺るぎはないなど、非常に共通点が多いです。

異星人でありながら高いコミュニケーション能力を持ち、後進文明である地球人類に対しても敬意を払い、ウェットの富んだ会話を楽しむ老練さ、紳士的ですらある佇まい。ソフィーがゼルに惹かれるのも無理は無いでしょう。終盤はジェダイのパダワン程ではありませんが、師と弟子みたいな感覚に近いものがあったのかもしれません。

ソフィーのヒロイン力に欠けていたもの

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さて、これまで述べた様にソフィーがヒロインとして扱われなかった理由としては監督の個性や話の流れによる外的要因が大きかったことは明らかです。

第1クールでは由希奈のクラスメイト兼黒部研の仲間として存在し、第2クールに入って剣之助と由希奈の関係が落ち着くと剣之介とソフィーの関係も少しは進展するかな?と思っていたのですが実際にはほとんど日常シーン以外の出番がありませんでした。

妹ポジションを小春に取られてしまい出番が減ってしまったのも大きいですね。画的に美夏と1セット、同列に扱われた感が(笑)

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また第2クールでは新たなヒロインとしての尺をムエッタにかなり取られてしまったのも要因の一つでしょう。クロムクロが剣之介の物語である以上、雪姫を話の軸にせざるを得ませんし、まぁこれは仕方ないといえば仕方のない処ではありますが。

終盤のソフィーのイベントはガウス単座化からの戦力外通告、剣之介の雪姫に対する思慕の情の絡みの好感度の変化くらいですか。剣之介との関係性でスポットが当たったのは。しかしそれも結局物語上黒部に残る理由付けくらいでしか機能しなかったのが残念です。

そういう意味ではソフィーは良い子過ぎたのかもしれません。終始冷静で客観的に状況を見守るキャラクターでしたから。

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唯一彼女が取り乱したのがセバス戦死!?のシーンでした。もう少しソフィーが感情的に動いてくれるキャラであれば、あるいは剣之介や由希奈との関係性に一歩踏み込み変化が生じたかもしれません。その点は少し残念です。

結局ソフィーは剣之介の物語のヒロインにはなれませんでした。それはあまりにも彼女が過度にサムライ(の美学)に思い入れをしていたせいでもあります。終盤はゼルとの絡みが増えたせいで、そちらの方に好意(敬意)のベクトルが向いてしまっていたのも大きいでしょうね。

まぁ結果的に剣之介は由希奈と晴れてくっつき、本人や周りにとっても一番幸せな形に落ち着いたので万事めでたしめでたしなのかもしれませんが(笑)

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なお26話(最終回)のエピローグでは宇宙に向けて旅立つ美しく成長したソフィーさん(20歳前後?)の姿が見られます。万難を排して220光年彼方のゼルの星に向かうところを見ると、やはり5年経っても思慕の情はかなり強いご様子です(笑)

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▲ もしゼルさんの奥さんや娘さんが母星で生きていたら…

(ごとうあさゆき)

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