ろんぐらいだぁす!は専門用語だらけで難しい!? 意味を知れば自転車はもっと楽しくなる!【ネタバレ】
制作がなかなか難航している『ろんぐらいだぁす!』。今回は特別編…という名目の小休止が入りましたのでレビューはお休み。
そこで亜美達が行っているスポーツとしてのサイクリングの区分、そして劇中に登場する自転車の種別を専門用語の解説の面からチェックしてみました。
本編中でも『サイクリング』『ポタリング』『ロングライド』など、様々な専門用語が飛び交っています。それらの意味が分かると、よりグンと内容が面白くなりますよ!
【Ⅰ】自転車の車種の違い
まずは自転車の種別について。自転車には様々な種類が存在しますが、大きく分けて2つ、実用向きの自転車と競技用自転車があります。
《1》シティサイクル
まずは最も有名な自転車から。シティ車、軽快車又はママチャリ(俗称)とも呼ばれる(※1)、主に短距離の買物や通学通勤(自宅⇔駅間など)、およびポタリングに使われる実用車のことです。
一般に『自転車』と呼べばこちらを思い浮かべると思います。それほど庶民的で世間によく知られた存在。主婦が気軽に日常的に使っていることからママの自転車、ママチャリという愛称で親しまれています。最近は電動アシスト機能付きが人気です。
その名が示す様に女性が楽にまたいで乗れるよう、フレーム上管を後方に向かって下げた形状やカゴや荷台がデフォルトで装備されている等、女性への配慮が多く見られるのがポイント。生産数も他の車種に比べて圧倒的に多いため、非常に格安で購入出来るのも特徴的です。
※1…なおJISにおける正式な名称は『シティ車』。その定義は「主に日常の交通手段およびレジャー用に用いる短中距離、低中速走行用自転車」と定められています。
《2》ロードバイク
公道(ロード)で行われる競技に使用される競技自転車(レーサー)のことです。そのためロードレーサーとも呼ばれています。
本来は競技用の車両ですが普通に一般でも入手可能なため、サイクリングやツーリング、ポタリング及び健康のために運動する器材としても利用されており、一般的にスポーツ自転車を指す場合こちらをイメージすることが多いでしょう。
劇中では雛子と弥生が使用、そして4話にてついに亜美も購入に踏み切りました。
その特徴はなんと言ってもフレーム形状。背の高い水平フレーム(一部には傾斜フレームも)に極細のタイヤ、そして背の高いサドル位置。ハンドルはドロップ式で空力を得るためにサドル位置より低く、乗車時には前傾姿勢になるのがポイントです。
競技用のためとにかく軽量化と空気抵抗の軽減を図るため、泥よけ・スタンド・チェーンカバー・荷台やカゴ、およびランプに至るまで徹底的に省かれているスタイル。まさにシティサイクルとは対極的な存在です。
なおタイヤチューブのバルブにはフランス式が使われているため専用の空気入れが必要となります。
《3》クロスバイク
ロードバイクとマウンテンバイクの特徴を合わせた車種のこと。ハイブリッド(雑種)バイクとも呼ばれています。このクロスという言葉は『A☓B』の☓(かける)→十字→クロスより、異種交配の意味があります。
シティ車およびマウンテンバイクより公道を軽く走ることができ、通勤などの街乗りからサイクリングなどのレジャーにもよく利用されます。
劇中では葵が使用。5話以降は亜美に合わせてロードバイクへ乗り換えると思われます。(クロスも含め父親のお下がりという設定)
走りはロードバイクより重いですがマウンテンバイクより軽いという特徴があり、ロードバイクに比べると路面状態や天候に左右されにくいメリットがあります。なにより安くて頑丈です。
《4》マウンテンバイク(MTB)
山(マウンテン)や丘陵など、主にオフロードを専門に走破するスポーツ又はレジャー用の自転車として開発された車種。1980年代初めに米国で商業生産が始まった、割りと新しい自転車です。
その特徴は何と言っても悪路走行やクラッシュに耐えるように作られた頑丈なフレーム。そのため骨組み型式は菱形フレームが基本となっており、ぶっといタイヤは耐久性の象徴とも言えます。
悪路でもハンドル操作がしやすいよう幅の広い棒ハンドル、泥詰まりが生じないよう泥除けは付けず、岩道など自転車で走れない所は肩に担いで行くことを前提としているため、とても軽量に作られているのも特徴です。
またマウンテンバイクにはサスペンション(※1)を搭載している車両が多いのも特徴です。
※2…車やバイクに搭載してある衝撃吸収装置のこと。人体に伝わる振動を軽減するだけでなく、オフロード走行における路面のギャップ(凸凹)をタイヤがなぞることを補助し、路面への密着性(グリップ力)を向上させる効果があります。
《5》その他の車種
他にも自転車には様々な車種が存在します。
BMX(バイシクルモトクロス)バイク、トライアスロンバイク、サイクロクロスバイク、また競輪選手が使うトラックレーサーなどなど…様々な競技の種類毎に様々な車種が存在するのが自転車の特徴です。
亜美が使っているのは折りたたみ自転車。電車やバス、船および飛行機などで気軽に運搬するように、また工具を使わずに折りたたみ出来るように加工された自転車です。
多くは30秒以下で折りたたむことができ、折りたたんだ状態で立てられ、転倒しない工夫が施されたものも。『自転車でツーリングする』のではなく、『行った先で気軽にポタリングする』といった目的で利用されることが多い車種です。そのためマイカーに折りたたみ自転車を積んでいる自転車愛好家もいるそうで。
【Ⅱ】様々な自転車スポーツ。それぞれの用語が持つ意味の違い
《1》ポタリング(Pottering)
ポタリングとは『ブラブラする(あるいはダラダラする)』を意味するpotter(putter)の動名詞です。
余談ですがこのpotter、ハリー・ポッターの名字と同じスペルですがハリポの場合は『陶工』に由来する名詞です。putterは日本ではゴルフ用語の『パター』としても知られています。
つまりポタリングとは主に『自転車を使ってフラブラのんびり散歩する様に走る』と言った意味を含んだ用語です。『ぶらぶらすること』が主目的で、特に目的地も決めず、短~中距離をのんびりと気ままに走る…そんな乗り方を指す時に使われることが多い模様です。
あえて例を上げるとすれば、買い物をする行動における『ウィンドーショッピング』に近いかもしれません。
《2》ツーリング(Touring)
ツーリングは《旅》を意味するtourの動名詞で自転車やオートバイなどで遠出をする、旅をする、といった意味の用語です。
▲原作5巻より
『旅をすること』が主な目的となり、荷物を積んで計画的に長距離を移動するような乗り方を指します。基本的に自転車の場合、日数をかけて移動するサイクリング旅行のことをツーリングと呼ばれています。
有名な自転車競技にツール・ド・フランスがあります。こちらはTour de France(仏語)、英語風に言えばツアー・オブ・フランスで『フランスの旅』を意味します。ロード・レース競技大会の最高峰の一つであり、単にツール(Le Tour)と称されることも。
《3》ロングライド(Long Ride)
ろんぐらいだぁす!のタイトルのモチーフになっている『ロングライド』。これは実は和製英語で欧米圏では使われていません。
英語圏、仏語圏では、フランス語由来の単語であるランドネ(randonnée)が一般的で、そういったイベント参加者のことはランドヌール(Randonneur)と呼ばれています。
▲原作4巻より。この頃になると100km超え&ナイトライド(夜間走行)も当然になってます(笑)
日本において自転車での長距離走行を指す言葉として定着していますが、具体的な決まりは無く、100km程度のものから1200kmのものまで全てを『ロングライド』と、サイクリングもツーリングも一括りで呼んでいます。
亜美が目指す『ブルベ』『フレッシュ』といった自転車スポーツもこのロングライド(ランドネ)の1ジャンルです。
《4》サイクリング(Cycling)
サイクリングは『自転車』を意味するcycleの動名詞。つまり『自転車でお出かけする』と同時に『自転車に乗る』行為そのもの全て、スポーツも散歩も含んだ用語でもあります。
ただしスポーツとしての『サイクリング』に限って使う場合、『自転車に乗ることを主目的としつつ、目的地までの中~長距離をそれなりの速度で走る』といった乗り方をする場合を意味します。
《5》ヒルクライム(Hill Climb)
ヒルクライムは登坂競技のこと。山や丘陵の上り坂に設定されたコースを走るタイムレースの競技名でもあります。
主に自転車競技が有名ですが、オートバイ(モトクロス)や自動車などでも行われています。なおろんぐらいだぁす!では競技としてのヒルクライムではなく、『峠や激坂に挑戦する』といった意味でヒルクライムという言葉が扱われています。
余談ですヒルクライムは重力に逆らって坂を登るため、筋力より軽量であることが大きなポイント。クライマーと呼ばれる小柄な選手が活躍する競技です。
《6》ダウンヒル(Down Hill)
ダウンヒルはヒルクライムの逆、つまり下り坂を思いっ切りカッ飛んで下り降りる競技のことです。自転車では主にマウンテンバイクの競技が有名ですね。
山に造られた急斜面のコースを高速で下る。最も危険で激しいスポーツの一つ――エクストリームスポーツとして認知されています。
上級者は時速60kmを超えるスピードで走行し、コースは自転車が走るからといって土がしっかり踏み固められた所ばかりではなく、大きな石が平気でゴロゴロしているエリアや、砂利が敷き詰められている箇所、滑りやすい粘土質のコースなど、様々な障害が設けられています。
ろんぐらいだぁす!ではヒルクライムと同様、下り坂の高速走行チャレンジのことをダウンヒルと呼んでいます。一般的には坂は登る方が大変、降りるのは漕がなくて済む分楽なのでは?と思われがちですが、実はロードバイクにおける下り坂は心理的に非常に厳しいのです。
元々サドルよりハンドルの高さの方が低いロードバイクは前傾姿勢がデフォルト。そのため下り坂では更に前傾角が激しくなり、地面が近くことになります。その上スピードが出るのですからその恐怖感たるやスリル満載です。
おまけに手はハンドルを支え、ブレーキレバーをずっと握りっぱなしになるため、大変疲れやすく、すぐに握力低下してしまいます。峠道の様なワインディングコーナーの激しい下り坂では一歩間違うとオーバースピードで飛び出してしまう危険も!? 常に転倒の危険がつきまとう、体力精神面で非常に過酷なスポーツです。
おわりに
さて今回は自転車の種別と自転車の乗り方の用語にフォーカスを当ててみました。次回は亜美が目指すロングライド――『ブルベ』と『フレッシュ』を詳しく解説していこうと思います。
OPにあるような亜美・葵・雛子・弥生・紗希ら5人チームを結成してのブルベへのチャレンジ――早く動くアニメで見たいですね!
(ごとうあさゆき)
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アニメ ろんぐらいだぁす!
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